広島高等裁判所岡山支部 昭和42年(ラ)11号 決定 1971年4月26日
補助参加申立人 鴻上芳雄
右代理人弁護士 寺田熊雄
同 浦部信児
被参加人(抗告人) 株式会社藤井製作所
右代表者代表取締役 松原貫
右代理人弁護士 笠原房夫
相手方 更生会社株式会社フジビル(旧商号、二葉商事株式会社)管財人 野津克己
右代理人弁護士 甲元恒也
主文
本件参加申立を却下する。
理由
一、申立人の参加理由の要旨
申立人は更生会社株主(六〇株所有)であり、かつ申立人が社長をしている光軽金属工業株式会社は抗告人の下請会社であると同時に抗告人会社の株式も所有し、更に申立人は抗告人の下請会社をもって組織する「富士資材協力会」の会長も勤めている関係上、若し本件抗告が棄却されると、抗告人会社と実質的に一体関係にある更生会社は相手方管財人の職権乱用による不徳義かつ違法な手段により関係人以外の第三者に乗っ取られ、その結果株主としての地位及び権利に著しい不利益を受けるので、本件抗告事件の結果につき利害関係がある。
二、相手方の異議
抗告手続は抗告人が単に原決定の不当なことを理由として上級裁判所にその破棄を求めるものに過ぎず、抗告人には本来対審上の相手方に相当する立場のものがない。即ち、判決手続に認められるような権利拘束となった訴訟が存在しないから、もともと補助参加をなすべき余地はなく、抗告手続については参加等に関する規定の準用がない。従って本件参加の申立は失当として却下されるべきである。
三、当裁判所の判断
民訴法六四条の補助参加は訴訟が係属しているいることを前提とする。そして、同条に所謂「訴訟」とは必ずしも判決手続のみを指すものではないが、右手続以外の決定手続・抗告手続等については、その手続が実質上相対立する当事者間の権利義務に関する紛争をふくむ等判決手続に類似する構造を有するものでなければ、同条を準用して補助参加を認めることはできないものと解する。
ところで、本件抗告は更生計画を追加変更した原決定に対し、会社更生法二七一条一・二項違背を理由にこれが取消を求める即時抗告であって、その審理対象は主として右更生計画の変更が同条一項の「やむを得ない事由」に該当するか否か、そして該当するとすればこれが同条二項所定の利害関係人に及ぼす影響の有無、更には変更された本件更生計画の公正衡平のみならず実行可能性等をも併せて合目的々見地から判断するものであり、しかも変更された内容は「新株の発行、その割当を管財人に一任する」趣旨に過ぎないものである。
従って、これらの事項はすべてその性質上、更生裁判所乃至抗告裁所において当然考慮しなければならない職権的判断事項であり、これが審理にあたっては必ずしも相対立する当事者の存在を要せず、またその権利関係の存否等についても何ら実質的に判断するものでないから、本件抗告手続をもくして前叙のような訴訟類似の手続と看做すことはできない。
そうすると、本件参加申立はその前提を欠き不適法であるからこれを却下することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長判事 高橋正男 判事 中原恒雄 永岡正毅)